物理学科

物理のプロとして世界にひそむ普遍性を探る

ミクロな素粒子、身の回りの多彩な物質、生命を支える生体分子、そして広大な宇宙。物理の世界には広大な未開拓の領域が広がっています。各分野をリードする研究者たちと一緒に未知の世界を旅してみませんか。


専門科目

【光学】【量子力学】【電磁気学】【流体力学】
【解析力学】【特殊相対論】【生物物理学】
【核および天体物理学】

研究のレベルは驚くほど高く、同規模の私立大学の中では群を抜いています。
メンバーのうちの何人かは、分野のリーダーとして世界的に知られる研究者です。

自分の視野が広がった、3年間。

物理学科3年生

私は幼い頃から漠然と神秘的な宇宙に興味がありました。そして高校2年生の時に、学校に来てくださった国立天文台の天文学者の講義を聞いたのがきっかけで、さらに興味が深まり物理学科へ進学することを決めました。進路を決める際、他の大学の物理学科も検討をしていましたが、父から「学習院大学なら他学部と同じキャンパスだから、視野が広がるよ」とアドバイスをもらい、学習院に決めました。アドバイスの通り、文系も含めワンキャンパスのため、教職の授業や部活を通し他学部の人たちと話す機会が多く充実しています。また、物理学科の中では、私と同じように宇宙や物理学に興味を持つ仲間と、同じ目標に向かって勉強出来たことが、とても嬉しかったです。

昨年はKEK(大学共同利用機関である高エネルギー加速器研究機構)が企画しているサマーチャレンジに応募し、運よく選出され、全国の大学から集まったメンバーと筑波で研究合宿に参加しました。この経験は自分が研究をしたいという想いへより近づけた大きな出来事だったと思います。将来は、大学や研究機関で研究を続けたいですが、企業に入社して宇宙に携われる仕事があるなら、それも楽しそうだな、と考えています。

高い熱量をもって、研究に熱中できる場所。

物理学専攻 博士前期課程2年生

学習院大学理学部は比較的少人数なため、友達ができやすく、縦のつながりも持ちやすい環境です。同級生とは講義、演習、実験で毎日のように顔を合わせ、気がつくと遊ぶ時も一緒にいます。学年を超えて交流するイベントもあり、物理の疑問を聞いたり、授業、研究室について信用度の高い情報を仕入れたりできます。ゼミでは量子光学について議論することが多く、講義も量子や計算機に関係する内容のものを優先して履修しました。好きなものにより熱中でき、近い専門分野を研究されている同世代の方々と、時間に縛られずに熱く議論できるのは、大学院ならではの魅力だと感じます。昨年には、電子情報通信学会エレクトロニクスソサエティ主催の量子情報技術研究会で研究成果を発表し、学生発表賞を受賞することができました。私の所属している研究室では、研究活動の一環として、発表に関しても(謙遜ではなく)初歩から手厚い指導を受けられます。外部からも興味深いと感じてもらえる研究に挑戦でき、また、専門的な内容を人に伝える能力も培える環境は非常に魅力的だと思います。私自身は、手厚い教育の学習院大学だからこそ成長できたと考えています。修了後はIT系の民間企業に就職する予定です。学習院大学で得た力をベースに邁進します。

物理学科の最大の魅力は先生と学生との距離が近いこと。

物理学科 卒業生

学問の知識だけでなく、問題に立ち向かう姿勢やプレゼンテーションの準備などについても、少人数教育のなかで丁寧に(時には厳しく)指導してもらったことを覚えています。社会に出てから、そういう教育の重要性をますます痛感しています。今は後輩たちに「流体力学」を講義していますが、「考える大切さ」を感じてもらうよう心がけています。

  • 1990年 3月学習院大学理学部卒業
  • 1995年 3月東京農工大学大学院博士後期課程修了
  • 1995年 4月東京大学大学院理学系研究科大学院研究生
  • 1995年10月科学技術庁航空宇宙技術研究所科学技術特別研究員
  • 1997年10月航空宇宙技術研究所研究員
  • 2004年 4月青山学院大学客員准教授(連携大学院方式)を兼務
  • 2013年10月国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
    航空技術部門 研究領域主幹
  • 2018年 4月学習院大学理学部客員教授に着任
  • 【業務等】航空機の摩擦抵抗を低減するため、境界層の層流-乱流遷移の研究に従事。「次世代超音速機技術の研究」プロジェクトでは2005年10月に実施した小型超音速実験機の飛行実験で主翼の性能実証を担当。2009年度から流体力学の講義を担当。
  • 【受賞等】第10回「空を愛する女性たちを励ます賞」(社団法人 日本女性航空協会)
物理学科/教員紹介DEPARTMENT OF PHYSICS
  • 井田 大輔
    イダ ダイスケ井田 大輔教授[一般相対論・宇宙論]
     
    われわれの時空そのものを記述する一般相対論は、現代の宇宙論の必須の言語である。井田教授は、膜宇宙論モデルの提唱、高次元ブラックホールの一意性の証明などで世界に知られる相対論・宇宙論の研究者だ。宇宙に興味を持つ好奇心旺盛な学生たちの素朴な疑問に楽しくつきあいながらも、加速器によるブラックホール生成など最先端の野心的なテーマに挑みつづける。現代物理学の究極の難問である重力の量子化をも視野にいれているという。モーツァルトとバッハをこよなく愛し、自らもピアノなどの楽器を演奏する。夕暮れの理学部棟の屋上では、井田教授の奏でるリコーダーの調べを聞くことができる。
  • 宇田川 将文
    ウダガワ マサフミ宇田川 将文教授[物性物理学理論]
     
    宇田川教授の研究テーマは「フラストレーション」。「ものごとが落ち着いたところにうまく収まらない」状態を表わす科学用語だが、身近な氷や、様々な磁性体で広く見られる面白い現象だ。宇田川教授は、氷とよく似た構造をもつ「スピンアイス」と呼ばれる磁性体の研究で世界的に知られている。長い年月をかけて編集していたスピンアイス研究の集大成となる本が昨年刊行され、この本を拠点として更なる科学の地平を拓いていくことが今後の目標である。新しい量子多体状態であるスピン液体の創出、理論物理学の最大の難問の一つの強相関電子系の理解、ガラスや準周期系など古くから知られている魅力的な物質系でのブレークスルーなど、遠大な目標の数々に向けて研究を進めている。家庭では、趣味と実益(?)を兼ねて難しい料理に挑戦しては失敗し、家の中にフラストレーションを生み出しているという。日本物理学会若手奨励賞を受賞
  • 田崎 晴明
    タザキ ハルアキ田崎 晴明 class=教授[理論物理学・統計物理学・数理物理学]
     
    2016年のノーベル賞への貢献が高く評価された量子スピン系のAKLT 理論、磁石の起源に最も深く迫る電子系の田崎モデルなど、大自由度の量子力学系についての数理的な業績で世界的に知られる田崎教授。ミクロな法則とマクロな世界をつなぐ統計物理学という分野の国内有数の研究者である。研究生活30年を過ぎても「若い頃からの『根拠のない自信』に支えられた無謀さを保ちたい」と語り、量子論に基づく平衡統計力学の基礎づけなど大胆な未解決テーマに挑み続ける。学習院での長年の教育をもとに執筆した『熱力学』、『統計力学』は国内では定番の教科書となり、英語版の出版の準備も進められている。インターネット好きでも有名で、以前からの web ページでの情報発信に加えて最近はYouTubeで講義動画を配信している。気ままにつぶやくツイッターのフォロワーは2万5千人を超える。第1回久保亮五記念賞を受賞
  • 西坂 崇之
    ニシザカ タカユキ西坂 崇之教授[生物物理学]
    ※生命科学専攻物理学科所属
     
    物理学の視点と手法を用いて生物を研究する分野を生物物理学という。歴史は長いが20世紀後半から飛躍的に発展してきた。2003年に若くして学習院に着任した西坂教授も、今や日本を代表する生物物理学の研究者だ。自ら発明したユニークな顕微鏡を駆使して生体内の様々な動きを解析する研究スタイルは他の追随を許さない。ある時は分子サイズの生体モーターが燃料のATPを使ってくるくると回る様子をありありと描き出し、またある時は微生物の想像を絶する奇妙な動きを解き明かす。幅の広い研究成果でいつも世界の研究者たちを唸らせる。潤沢な外部資金を得て整備された研究室は国内における分野の拠点の一つとなっている。押しも押されもせぬスター研究者の西坂教授だが一説では漫画についてはどんな学生よりも詳しいという。日本学術振興会賞を受賞
  • 平野 琢也
    ヒラノ タクヤ平野 琢也教授[量子光学]
     
    素粒子の運動が量子力学に従う事は良く知られているが、実は、光も量子力学に支配されている。量子力学が生み出すさまざまな不思議な現象を、最先端の光学技術であやつるのが量子光学だ。平野研究室は、ボース・アインシュタイン凝縮の研究などで知られる国内有数の量子光学の研究グループである。量子暗号通信(絶対に盗聴できない通信!)や超高精度測定など未来のハイテク技術をにらみながら、じっくりと基礎の研究を進めている。一人ひとりが、世界の神秘に心を踊らせながら、個性を発揮して楽しく研究できる研究室をめざしているという。松尾学術賞を受賞
  • 町田 洋
    マチダ ヨウ町田 洋教授[物性物理学実験]
     
    2018年に発足した新しい研究室を率いる町田教授は、若手ながら、金属磁性体における自発的ホール効果、絶縁体での巨大な熱電効果などの発見で知られる物性物理学の実験家である。新しい物質を作り出し、量子性や非平衡性から生まれる驚くべき現象を探索する研究スタイルは「現代の錬金術」と言ってもいいだろう。流行を追わず独自の発想で研究を進めながら世界的に注目される成果を挙げる実力には定評がある。立ち上がったばかりの研究室で発見した「薄いグラファイトが驚くほどよく熱を伝える」という新現象は早速 Science 誌に発表された。将来的には研究室で発見した現象をもとに新技術を開発し、社会に貢献することも視野に入っているという。研究に関しては野心的な町田教授だが、テレビのお笑い番組は欠かさずこまめにチェックするという意外にゆるい一面もある。日本学術振興会賞を受賞
  • 松本 伸之
    マツモト ノブユキ松本 伸之准教授[量子計測・制御]
     
    量子力学に支配されるミクロな世界では、電子も光も、ときには粒子のように、ときには波のようにふるまうことが知られている。私たちに身近なマクロな世界でもこのような量子的な不思議な性質を見ることができるだろうか? 2021年に立ち上がった松本研究室では、この素朴だが深い疑問に真正面から答えるため、最先端の重力波検出技術と独自の手作りの技術を融合した超ハイテク実験を進めている。現在の目標は小さな振り子の振動を極限まで小さくして「量子ゆらぎ」を直接に観測することだ。これに成功すれば副産物として人類史上最高の感度の重力計が得られる。学生時代に自ら立ち上げたビリヤードサークルをゼロから育て上げたという松本准教授は、今は「マクロ物体による量子センシング」という人類にとって未踏の分野をほぼ独力でゼロから築き上げようとしている。文部科学省卓越研究員(令和3年度~令和5年度)
  • 渡邉 匡人
    ワタナベ マサヒト渡邉 匡人教授[結晶成長・結晶工学]
     
    渡邉教授は、企業の研究所で最先端の技術開発を手がけたキャリアをもつ。次世代の情報機器のための大口径シリコン単結晶の育成法として注目を集めるEMCZ法は渡邉教授の発明である。シリコン融液の流れを電磁気的な力で制御するという非凡な着想を実用的な技術にまで高めた成果は高く評価されている。現在は、結晶成長の原子レベルでのメカニズム解明を目指し、液体構造と物性の関係を明らかにするという基礎的な難問にじっくりと取り組んでいる。必要に応じて研究室を飛びだし、大型放射光施設SPring-8など外部の施設でも実験をおこなう。長年にわたって準備してきた国際宇宙ステーションでの微小重力環境実験の計画も軌道に乗り、今も実験の真っ最中だ。技術開発に真に有用な基礎研究の新しい姿を求めて、渡邉教授のチャレンジはつづく。